前回の基板フルメンテナンス前半(部品の取り外し)に続き、今度は新しい部品の取り付け方法について紹介します。
ここまでにPCエンジンDUOの電解コンデンサの取り外しと基板洗浄が終わりましたので、次に部品の取り付けに取り掛かります。
小型の部品から取り付けるのが電子工作のセオリーで、まずはチップ電解コンデンサを取り付けます。
チップ電解コンデンサは表面実装ですので、ペーストはんだを使います。
ペーストはんだは常温ではフラックス成分が劣化してしまいますので、保管は冷蔵庫で行い、使うときに常温に戻して使います。
ボトルタイプと注射器タイプがありますが、今回はこのような注射器タイプを使います。
ペーストはんだを塗るコツですが、パターンの上に山を作るような感じで載せていきます。こうすると、はんだボールという厄介な副産物が出来づらいことが判っています。
このように、割と大雑把な感じで大丈夫です。
工場では、クリームハンダ印刷機という機械を使って印刷するのですが、こんな感じになるみたいです。
そしてペーストはんだを塗ったら、その上に部品を載せていきます。極性には気をつけましょう。
シルク印刷の中にきちんと収まるように部品を載せます。
取り付ける部品は、太さ(径φ)が合っている必要があります。先のパーツリストに載せたサイズも、ノギスを使って実測したものです。念のためパーツリストを再掲します。
そして、部品を載せたら、いよいよホットエアーガンを使って部品を半田付けします。
ただ、いきなり部品の足を熱風であぶると、綺麗に半田付けできません。
そこで、プリヒートといって、部品の周囲の基板(複数の部品があって良い)を200℃くらいに温めてから、個々の部品の足に熱風を温めます。プリヒートでは、ペーストはんだのフラックス成分が蒸発し、マット調になるまで温めるのがコツです。
次に部品ひとつひとつに熱風を当てていきます。すると、部品1個あたり10秒もかからず半田付けできます。部品の足部分のペーストはんだが溶けると銀色になり、足の周囲に凝集します。部品は自ずとあるべき位置に微妙に移動して固定されます。それを確認したらホットエアーガンを離します。
それを繰り返して、全てのチップ電解コンデンサを取り付けます。
取り外した時の1/3くらいの時間で取り付けることができて、楽ですし楽しい作業です。
ここで注意したいのは、「はんだボール」という小さなハンダの塊が出来てしまうことがあることです。
ホットエアーガンで半田付けをしていると、「キラリ」と光る物体が足から分離して転がっていくのが見えます。放置するとショート等の危険があるので、ピンセット等で拾い上げます。
あと、電解コンデンサの交換でも厄介な箇所が一つだけあります。
それは、CD-ROMドライブのコネクタ周辺の電解コンデンサです。
コネクタとコンデンサの距離が数ミリしかなく、ホットエアーガンは使えませんし、ハンダゴテをコネクタに少しでも接触させようなら、コネクタが溶けて変形させてしまいます。私物ならば「あ〜ぁ」で済むのですが、商品の場合、これだけは避けなければなりません。
そこで、例によってコネクタをマスキングテープで養生した上で、手ハンダで部品を取り付けます。
手ハンダでチップ部品を取り付ける場合に注意すべき点はあります。
それは、チップ部品の裏側に溶け残ったペーストハンダが残り、足ピンの間をショートしてしまう可能性があることです。これがパスコンだったりすると、電源がショートして大変なことになります。
ペーストはんだを乗せるところまではホットエアーガンを使う時と同じで、それをハンダゴテを使って半田付けします。
なるべく先の細いハンダゴテを使い、コネクタに近い方からはんだ付けをします。
このとき、コネクタに接触させるのを恐れて中途半端に半田付けしないようにします。
ピンセットでコンデンサを少し左右に揺さぶりながら、ペーストはんだをハンダゴテで溶かす感じで半田付けします。
とりあえずなんとか1個目を半田付けした様子。
やはりホットエアーガンを使った場合のように綺麗に半田付けすることは難しいのですが、テスターで足ピンの間の抵抗値を計測し、テスターが反応しなければOKです。
残りの2個も半田付けしたところです。
コネクタは一切変形させていません。
そして、最後に忘れずにヘッドホンボリュームも取り付けます。
ヘッドホンボリュームは、ゲームボーイカラーの保守用パーツとして入手できるものと互換性がありますので、流用します。
ゲームボーイカラーのジャンク品から取り外して流用する方法もあるのですが、普通に購入した方が100倍簡単です。
ここで気をつけたいのは、ヘッドホンボリュームの溝の奥まで押し込んで半田付けをすると、本体のカバーを閉めた時に奥に入ってしまって使いづらいので、手前気味に取り付けるのがコツです。
まずは1ピンだけ半田付けをして位置を確認します。 シルク印刷にぴったりと合わせる感じで固定します。
そして残りのピンも半田付けします。 これでヘッドホンボリュームの半田付けは完了です。
続いて、ラジアルリードタイプの電解コンデンサを取り付けます。
今回はたまたま、22μF 6.3V品のチップ電解コンデンサが品切れだったため、一部にラジアルリードタイプを使いました。特に機能的な影響はありません。見た目だけの問題です。
電気二重層コンデンサは、縦に取り付けるとカバーと微妙に干渉するため、横に倒して半田付けしてあります。
ということで、基板のフルメンテナンスは終了です。
そして、一応外観を確認したあと、動作確認。
映像も音声もばっちり動作確認できました。
ここまで集中して作業してしまったため、どっと疲れが出てきました(笑)
おおよそ半日程度の作業です。
まずはご苦労様でした!
続いて、いよいよRGB出力追加に取り掛かります。
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次の記事へ続きます。