ここまでにPCエンジンDUOのRGB出力追加の改造を紹介してきました。
この記事では、THS7374を使ったRGBアンプの回路図や、SCARTケーブルの作成方法について紹介したいと思います。
RGBアンプモジュールの回路図
一旦最終形になるであろうRGBアンプモジュールの回路図は以下の通りです。
データシートのACカップリング型の回路図通りで、特に変わった点はありませんが、電源にエミフィルを使う所だけが今どき仕様です。
THS7314を使った実績のあるモジュールも買ってきて解析しましたが、やはりデータシート通りでした。
THS7374が載ったスーファミ用のモジュールは部品点数から確認するに、カップリング用のコンデンサが削られている以外は、特に変わりないようです。
SCARTについて
SCARTはコネクタの形状やピンアサインを定義しているだけで、そこを流れる信号までは詳説されていません。
https://gamernium.com/Documents/scartconnector.pdf
色々と調べてみて判ったのは、
- RGB信号はVGAと同じ0.7Vp-p(Z=75Ω)
- 複合同期信号は1Vp-p(Z=75Ω)
複合同期信号のフォーマットはCVBSから分離したものですが、米国NTSCと同じ信号レベルになっています。と、言うことは国内RGB21ピン仕様とは信号レベルが違いますね。市販の変換ケーブルは直結のようですが大丈夫なんでしょうか…割と大雑把なんですね笑
あと、スキャンコンバータのCSync入力は、実験してみたところVGAと同じTTLレベルでも行けましたが、ノイズ耐性よりは仕様通り1Vp-pで進めたいと思います。
SCARTケーブルの作成1(MDケーブル改造編)
早速PCエンジン専用のSCARTケーブルを作成してみたいと思います。
イチから作るよりは、初代メガドライブのSCARTケーブルを改造するのが手っ取り早そうなので、まずは紹介したいと思います。
作成するケーブルの外観はこんな感じです。
やることとしては、
- ケーブルを仕入れる
- SCARTコネクタ側の配線を一部入れ替え
- DIN8ピンコネクタ側をPCE仕様に入れ替え
まず、初代メガドライブ用SCARTケーブルは、オークションサイトやフリマサイトで入手できます。スキャンコンバータ向けのものです。
そして早速ケーブルの改造に取り掛かりますが、メガドライブ用SCARTコネクタ側は、音声RとLが短絡されているため分離します。
次の表のように、網掛け部分を入れ替えます。
ピン番号 | メガドライブ | PCエンジン |
---|---|---|
1 | - | - |
2 | 音声(モノラル) | 音声(右) |
3 | - | - |
4 | GND | GND |
5 | GND | - |
6 | 音声(モノラル) | 音声(左) |
7 | BLUE | BLUE |
8 | - | - |
9 | GND | GND |
10 | - | - |
11 | GREEN | GREEN |
12 | - | - |
13 | GND | GND |
14 | - | - |
15 | RED | RED |
16 | - | - |
17 | - | - |
18 | GND | GND |
19 | - | - |
20 | CSync | CSync |
フレーム | GND | GND |
結線したコネクタの外観です。
DIN8ピンコネクタ側は、フレームグランドでケーブルがカシメられている場合が多いので、無理に流用しようとせず、新品のコネクタを買ってきて配線した方が早い場合もあります。
DIN8ピンコネクタは、ケーブル側から見ると次の写真のようになるよう結線します。
こんな感じになると思います。
そして、PCエンジンと接続して映像と音声を確認します。
複線ケーブルでシールドが無いためか、少しだけドットが滲んでいるようには見えます。動きのある映像では気にならないレベルなので、目を凝らしてみないと気にならないと思います。
一応、CSyncの信号線をオシロスコープで当たってみます。
あー、シールド線ではないので、やっぱりクロストークしてますねぇ、、
でもシュミットトリガ入力にすれば問題にはならないレベルです。大雑把な感じですが、回路で云々できる話ではないので、これ以上はどうしようもありません。
SCARTケーブルの作成2(同軸ケーブルにしてみる)
一般的なSCARTケーブルは単線のケーブルですが、本気で追い込もうとしたら同軸ケーブルが欲しいところです。
フリマアプリで出品する商品ではそこまでするとやりすぎな感じがするので、個人的な興味で同軸ケーブルを作成してみたいと思います。
ちなみに参考までにメガドライブ用同軸RGBケーブルはこちら。
レトロアクセス セガメガドライブ ステレオRGB SCART CSYNC同期ケーブル
やっぱりこれくらいのお値段にはなってしまうんですねぇ。RGBSそれぞれの信号線が独立した構造のようです。こんな感じで作ってみます。
ちなみに、大量発注するとメーカーにカスタムでケーブルを作って貰えるそうです。上のメガドラケーブルみたいなこともできます。今回はもちろんそこまではやりませんが(笑)。
今回は、単芯の同軸ケーブルで、しかも2重編組同軸ケーブルを4本(音声用は別)束ねる形で作ってみます。
同軸ケーブルの規格に関しては疎いので部品屋の店主さんに色々と話を聞きましたが、映像用で周波数も1MHz程度であれば1.5Cを束ねるのが良いんじゃないかということでした。それでもVGAケーブルよりも太くなりそうです。
使うケーブルは、日本メーカーブランドが良いのでフジクラの1.5C-2Bを6mほど調達してきました。単価としては150円/m。意外と安いですが、これで相手に不足はありません。
芯線の周りには絶縁体があって、アルミ箔と銅の網線でシールドされています。
ちなみに同軸ケーブルなどの太いケーブルの被覆の剥き方ですが、電気工事士の資格を取る時(取っただけですが)に教えられたように、電工ナイフで電線に沿って切れ目を入れたあと、被覆を開いてから余った被覆をナイフで切り取っています。中の電線には傷を付けない上に作業も捗ります。
芯線の絶縁体は、電子工作用のワイアストリッパーで剥きます。
ということで、とにかく手を動かしてみます。まずはSCARTコネクタ側に結線します。
次に、DIN8ピン側も結線します。
ということで、テスターで一応チェックしてから電源ON!
Yes! ちゃんと映りました。
ピクセルの滲みも無いようです。ゲーム機というよりは、殆どPCのような感じです。
折角なので、更に拡大して見てみます。ピクセルマニアとしては気になるところです。
うぉー、ピクセルくっきり!
気になるCSync信号の波形もチェックします。
見事にクロストークノイズが消えています。同軸ケーブル化の効果は確かにありました。
と、いうことで実験は終わり…かと思いきや。
同軸ケーブルを束ねるのも良いのですが、映像用RGBケーブルと言えば…VGAケーブルの存在を忘れていました。VGAケーブルだったら中古屋さんでジャンクで100円程度で手に入るくらいですし、手軽に?加工できるのでSCARTケーブルの量産に向いていそうです。
…ということで、飽くなき実験を続けます。
次回の記事へと続きます。